造影剤使用後の看護
造影剤を使用した検査や治療を受ける患者で一番重要な点は「造影検査後」のアセスメント。
造影後は副作用等生じることがあるため検査後の観察が重要となる。
造影剤に副作用の基本として「造影剤アレルギー」と「腎臓への副作用」の2点が上げられる。
💡造影剤アレルギー
・造影剤アレルギーには「急性(即時性)副作用」と「遅発性副作用」がある。
◎急性(即時性)副作用
➔造影剤注入後1時間以内に起こる副作用のこと。
急性副作用を評価するには、患者の元々の状態を評価できている必要あり。元々の状態を把握することで症状が出現したときに素早く気付くことができ、対応することができる。
※造影剤による主な急性副作用
軽度
<アレルギー様症状>
・軽度の蕁麻疹
・軽度の掻痒感
・紅斑
<化学毒性による症状>
・悪心/軽度の嘔吐
・温感/悪寒
・不安や自然消失する血管迷走神経反射
中等度
<アレルギー様症状>
・著明な蕁麻疹
・喘鳴、呼吸困難
・顔面/咽頭浮腫
<化学毒性による症状>
・血管迷走神経反射
重度
<アレルギー様症状>
・血圧低下、意識障害
・呼吸停止
・心停止
<化学毒性による症状>
・不整脈
・痙攣
⚠最初は軽度でも重症化することもあるため異変に気付いたら速やかに医師へ報告を。
*全身性アナフィラキシー様症状反応への対応
✔まず、最初に人を集める。
✔MRIでアナフィラキシーが起きた場合は、患者を検査室の外に出す。
(挿管セットや除細動器などの金属類は、MRIの強い磁気で引き寄せられて持ち込むことができないため。)
✔可及的(できるだけ)速やかにアドレナリン0.5ml(0.5mg)を筋注。必要に応じて繰り返す(場所は大腿外側。投与場所に困ったら大きな筋肉に打つ。)
◎遅発性副作用
➔造影剤注入後1時間~1週間経過後に発現する副作用。
多い症状として「斑状丘疹状皮疹」「紅斑」「腫脹や掻痒感」。軽度~中等度で慢性化しないことが多い。ヨード造影剤での発症が多い。
*斑状丘疹状皮疹とは?
アレルギー機序による薬疹で、薬疹の中で最も多いタイプの薬疹。薬剤を新規で摂取した際に、1~2週間で出現。1~3日で出現することも。軽症であれば、ステロイド外用、またかゆみがあれば抗ヒスタミン内服。発熱を伴う場合、かゆみなどの症状が強い場合は、ステロイド内服を行うことも。
💡造影剤による腎臓への副作用
造影後急性腎障害(Post Contrast-Acute Kidney Injury :PC-AKI)
腎臓への副作用として造影後急性腎障害(PC-AKI)がある。造影剤投与後48~72時間以内の血清クレアチニン値が0.3mg/dl以上上昇、もしくは前値から1.5倍以上の上昇を示した状態を指す。
ガドリニウム造影剤(MRI)ではまれだが、ヨード造影剤(CT)では投与後の腎血管収縮、腎血流量の低下、糸球体濾過量の低下が報告されている為注意必要。
*腎臓への副作用のアセスメントPOINT
✔尿量の確認
✔血清クレアチニンのチェック(0.3mg/dl以上or1.5倍以上の上昇の有無)
✔eGFRのチェック(30ml/分/1.73m2より少なくないか)
💡超遅発性副作用(甲状腺中毒症・腎性全身性線維症)
超遅発性副作用は、造影剤注入後1週間以上経過してから起こる副作用。
◎ヨード造影剤(CT):甲状腺中毒症
ヨードが蓄積されることで甲状腺機能が亢進する甲状腺中毒症がある。甲状腺中毒症は、未治療のバセドウ病患者はハイリスク。造影剤投与によるヨード過剰状態をうまく自己調整できない為。
◎ガドリニウム造影剤(MRI):腎性全身性線維症
体内に長く貯留したガドリニウムが引き起こす腎性全身性線維症がある。ガドリニウム造影剤を投与してから2~3ヶ月後、時に数年が経過してから発症することもある。ガドリニウムが遊離して皮膚に沈着して、皮膚を繊維化させるため、遅い発症となる。主な症状は皮膚の疼痛や掻痒感、腫脹や紅斑で、下肢から発症することが多い。晩期の症状としては、皮膚や皮下組織の繊維性肥厚、下肢拘縮、内臓臓器の繊維化が起こることがある。重症だと手足が動かしにくく寝たきりになることも。障害が高度であれば死に至ることも。
腎性全身性線維症は、透析患者や、eGFR<30ml/分/1.73m2である腎機能低下患者がハイリスクになる。これらの患者に造影剤を使用した場合は注意が必要。
💡造影剤に関するQ&A
Q1.造影剤の腎臓への副作用は透析で改善する?
➔A.改善しない。透析で造影剤を除去できても、副作用の予防にはならない。
ヨード造影剤は血液透析の時間調整や追加の血液透析は不要。
ガドリニウム造影剤は造影剤投与と透析の時間を調整し、追加の血液透析も投与後なるべく早く行うことが推奨される。
Q2.造影剤はなぜ利き腕に関わらず右側から入れるの?
➔A.造影剤を早く、十分に末梢まで到達させるため。造影剤を左から投与した場合は、左腕頭静脈(右より長い)と経由する分、心臓までに達する距離が長くなるため。
ただし、厳密にはいつも右というわけにはいかない。例えば、透析患者や乳癌患者等右からルートをとれない場合もあるため、その際は医師に確認をする。
Q3.同日にCTとMRIの造影を施行しても大丈夫?どっちが先に施行するべき?
➔造影検査の間隔は、患者のeGFR(推定糸球体濾過量)の値により判断。
欧州のガイドラインでは、eGFRが「30ml/分/1.73m2」より多ければ4時間、「30ml/分/1.73m2」未満では7日明けることとされている。
基本的には、造影剤は24時間でほぼ全量が尿として排泄されるが、腎機能が悪いと造影剤が尿として排泄されるまでに時間がかかる。ただし、同日に異なる造影検査を行う場合の安全性は確立されていない。可能な限り24時間は空けることが原則。
なお、造影MRIを先に行うと、造影剤が画像所見に現れ、診断を誤る要因になるため、腹部の検査では、造影CTを先に施行することが多い。胸部や脳の検査はどちらでもよい。
Q4.造影剤専用のルートを使用する理由は?
➔一般的なルートでは耐圧性に乏しいため。検査によって造影剤の投与速度は異なるが、基本的に造影剤は自動注入器で高速注入するため、それに耐えうる耐圧チューブでルートを作る必要がある。
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